生理障害 5 品目で報告

カルシウム欠乏(尻腐れ・縁腐れ・芯腐れ)

別の呼び方: 尻腐れ果

トマトやピーマンの実の尻が黒くへこむ、レタスの葉の縁が焦げる、ハクサイやシュンギクの芯が茶色くなる。見た目はばらばらですが、どれも同じ、カルシウムが足りないところで起きています。病気ではないので、まわりへ移りません。

ここでいちばん大事なことを先に書きます。たいていの場合、土にカルシウムが足りないわけではありません。 石灰を入れてあるのに出ます。足りないのは、土の中の量ではなく、株がそれを運べたかどうかです。

カルシウムは水に乗って運ばれ、蒸散の多いところ、つまり大きく広がった葉に集まります。実の先端や、芯の新しい葉のような、蒸散の少ない場所には最後にしか届きません。だから土が乾いたり、肥料が効きすぎて水が吸えなくなったりすると、そこだけが欠乏します。

つまり、対処は石灰を足すことではなく、水を切らさないことと、肥料を効かせすぎないことです。

見分け方

  • トマト・ピーマン — 実の先(尻)が黒っぽく変色してへこむ。水がしみたような褐色から始まり、やがて黒く乾く。はじめにつく実ほど出やすい
  • レタス — 外葉ではなく、巻き始めた内側の葉の縁が、焼けたように褐色〜黒褐色になる
  • ハクサイ — 葉の縁が褐色になる(縁腐れ)、または中の芯が褐変して腐る(芯腐れ)。外から見ただけでは分からず、割ってはじめて気づきます
  • シュンギク — 芯から出てくる 2〜3 枚の葉の縁が茶褐色〜黒くなる。茎の先が変色してそこで止まることもあります
  • 共通するのは、いちばん新しい部分と、実の先端にだけ出ること。古い葉は正常なままです
  • カビも、ぬめりも、悪臭もありません。腐敗菌が二次的に入らないかぎり乾いた傷になります

出やすい条件

  • 梅雨明け以降の、暑くて乾いた時期。 蒸散が激しくなるほど、新しい葉と実の先に回らなくなります
  • 土が乾いたり濡れたりを繰り返すとき。急に乾くのがいちばん悪い
  • 元肥の窒素が多すぎるとき。 葉ばかり茂って、実や芯へ回りません
  • 土の肥料濃度が高いとき。根が水を吸いにくくなります
  • 根が傷んでいるとき。深植え、過湿、連作で根が弱っていると運べません
  • 若すぎる苗を植えたとき(トマト)
  • シュンギクはもともとカルシウムをよく使う作物で、暑い時期は根の吸う力が落ちるため出やすくなります

出さないために

  1. 土を乾かさない。 梅雨が明ける前に、株元にわらや刈り草を厚く敷いてください。乾いてから慌てて水をやるのではなく、水分を上下させないことが目的です。マルチも同じ働きをします
  2. 元肥の窒素を控えて、追肥で足す。 これが二番目に効きます。最初に効かせすぎると、葉だけが茂って実と芯に回らなくなります
  3. 石灰質の資材は、植えつけの 2 週間以上前に全面にまいて耕す。 pH 6.0〜6.5 が目安です。これは「足りないから足す」のではなく、土台として整えておくという意味です。出てから慌ててまいても間に合いません
  4. 若すぎる苗を植えない。 トマトは第 1 花房の花が咲き始めた苗を植えてください
  5. 暑い盛りの作型を避ける。 シュンギクは、高温期の栽培をずらすのがいちばん確実です
  6. ハクサイは、移植よりも直まきのほうが根が広く張るぶん、出にくくなります

出てしまったら

  • 出た実・出た葉は戻りません。 取り除いてください。残しておくと、そこから腐敗菌が入ります
  • ただし、株そのものは健全です。 あとから着く実や、次に出る葉は正常に育ちます。抜く必要はありません
  • いますぐやることは、水と敷きわらです。 土の乾湿が落ち着けば、次の実から出なくなります
  • 石灰をまくのは、いま出ている症状には効きません。 来年の土づくりの話として覚えておいてください
  • 追肥を一度止めて、様子を見る。肥料が濃いときは、効かせるほど悪くなります

まちがえやすいもの

  • 軟腐病 — 同じように芯や葉の付け根が腐りますが、どろどろに溶けて強い悪臭がします。カルシウム欠乏は乾いた傷で、臭いません
  • 灰色かび病 — 実の傷んだところに灰色のカビが生えます。カルシウム欠乏にカビは生えません(放置して二次的に生えることはあります)
  • ホウ素欠乏 — 同じく芯が褐色になりますが、茎の内側が褐変して空洞になり、根にひび割れが出ます
  • 肥料焼け — 下葉の縁から枯れ込みます。カルシウム欠乏は新しい葉から出るのが逆です
  • 日焼け(カボチャ・ピーマン) — 日の当たる側が白く抜けます。尻腐れは日陰側でも実の先に出ます

出やすい野菜

このサイトで扱っている品目のうち、カルシウム欠乏(尻腐れ・縁腐れ・芯腐れ)の報告があるものです。全部で毎年出るわけではありません。

よくある質問

石灰はまいてあるのに尻腐れが出ました。

よくあります。この症状は、土のカルシウムが足りないから出るのではなく、株がカルシウムを実の先まで運べなかったから出ます。原因のほとんどは、土の乾燥と、窒素の効かせすぎです。石灰を追加しても止まりません。まず敷きわらをして、水を切らさないようにしてください。

出てしまった実は、食べられますか?

黒くなった部分を切り落とせば食べられますが、そこから腐敗菌が入りやすいので、早めに取って処分するほうが無難です。株は健全なので、あとから着く実は正常に育ちます。

いま何をすればいいですか?

三つです。株元にわらや刈り草を厚く敷く。土を乾かさないように水をやる。追肥を一度止める。この三つで、次に着く実から変わります。石灰をまくのは来年の準備です。

レタスの内側の葉の縁だけが焦げています。病気ですか?

病気ではありません。チップバーン(縁腐れ症)と呼ばれるカルシウム欠乏です。土が乾いたり濡れたりを繰り返すと出ます。マルチを張って土の水分を安定させてください。まわりの株には移りません。

ハクサイは割るまで分かりません。防ぎようがありますか?

外からは分かりません。だから、出てから手を打つのではなく、はじめから条件をそろえておく相手です。植えつけの 2 週間以上前に石灰質の資材をまいて耕しておき、窒素とカリを効かせすぎず、土を急に乾かさない。直まきにすると根が広く張るぶん有利になります。