抽苔(とう立ち)
まだ小さいうちに花芽ができて、茎がすっと立ち上がってくることです。コマツナ・キャベツ・ハクサイに出ます。とう立ちした株は、そこから先は花を咲かせるほうに体を使うので、葉はかたくなり、キャベツもハクサイも結球しません。
病気ではありません。虫でもありません。株が「もう春が来た」と判断しただけです。アブラナ科の多くは、若いうちに一定の寒さに当たると花芽をつくります。その引き金が、こちらの意図と違うところで引かれてしまった、という話です。
だから対処も、出てからの手当てではなく、まく時期と、品種と、苗の大きさの三つに集約されます。肥料でも農薬でも止められません。
見分け方
- 株のまん中から、茎がまっすぐ伸び上がってくる。やがてその先に蕾がつく
- キャベツは、球の頭がとがってくる。結球しないまま茎が立ちます
- ハクサイは、芯の長さが 10cm を超えてきたらとう立ちが始まっていると見てよい
- 葉が立ち気味になり、茎に近い葉から硬くなってくる
- 苗が小さいうちに寒さに当たった株から順に出ます。畑全体ではなく、まいた時期や場所でばらつきます
出やすい条件
- 小さい苗が寒さに当たったとき。 コマツナは、発芽直後からしばらく 13℃ を下回る日が続くと花芽ができます
- 秋の遅まき・冬まきで、寒さの中を小さいまま越したとき
- 春まきのキャベツ・ハクサイで、植えつけ後に冷え込みが戻ったとき
- 秋まき越冬のキャベツで、まくのが早すぎたとき。大きく育ちすぎた株が冬の寒さに当たると、春にとう立ちします
- 大きくなりすぎた苗を植えたとき
- 日が長くなるころ。寒さで花芽ができていた株が、ここで一気に立ち上がります
出さないために
- その時期に合った品種を選ぶ。 とう立ちの遅い品種が売られています。寒い時期をまたぐ作型では、ここが最大の保険です
- まく時期を外さない。 秋まき越冬のキャベツは、本葉 10 枚前後で冬を越すように逆算してまきます。早くまいて大きくしすぎるのが、いちばんよくある失敗です
- 小さいうちを寒さに当てない。 コマツナは、本葉 4 枚くらいまで 5℃ を下回らないように、トンネルか不織布のべたがけで保温します。ハクサイの春まきは、本葉 6 枚以上に育っていれば、そのあと一時的に 10℃ を下回っても結球します。そこまで育てるのが目標です
- 春まきは、植えつけてから根づくまでの 2 週間ほどを覆う。 不織布かビニールのトンネルで寒の戻りをしのぎます
- 大苗を植えない。 根鉢が回りきった老化苗は、植えてからの立ち上がりが悪く、とう立ちもしやすくなります
- 秋冬まきのハクサイは、まいてから 20〜30 日ほど寒冷紗をかけておくと、まく時期を 10 日ほど前倒しできます
出てしまったら
- 元には戻りません。 花芽ができた株が、もう一度結球することはありません
- 食べてしまうのがいちばんよい対処です。 蕾が上がったコマツナは、菜花として摘んで食べられます。秋にまいて採り遅れた株を春まで置いておくと、彼岸を過ぎて蕾が上がり、そのまま収穫できます。失敗を収穫に変えられる、数少ない相手です
- 硬くなった葉は、炒めるか煮るかすれば食べられます
- とう立ちし始めた株を畑に残しておいても、まわりに移ることはありません。ただし場所をふさぐので、次をまくなら早めに片づけてください
- 次に向けては、まく時期と品種を見直してください。 これしか手がありません
まちがえやすいもの
- 結球不良 — 球が巻かないという点は同じですが、茎は立ち上がりません。こちらは肥料切れ、密植、苗が大きすぎた、苗のころの温度が合わなかった、といった原因です
- ハイマダラノメイガ(シンクイムシ) — 芯を食べられて結球しません。芯にフンがあり、脇から芽が立ちます。とう立ちは中心から 1 本の茎が伸びます
- ホウ素欠乏 — 芯が褐色になって止まります。茎が伸びることはありません
よくある質問
コマツナの茎が伸びて蕾がつきました。もう食べられませんか?
食べられます。菜花として摘んでください。つぼみと伸びた茎のやわらかいところは、おひたしでも炒めてもおいしく食べられます。葉だけを採るつもりだった株が、別の野菜に変わったと思ってください。
春まきのハクサイがとう立ちしました。
苗が小さいうちに寒さに当たったためです。本葉 6 枚以上に育っていれば、そのあと一時的に 10℃ を下回っても結球します。次は、植えつけてから根づくまでの 2 週間ほどを不織布かトンネルで覆ってください。あわせて、とう立ちの遅い品種を選んでください。
秋まきキャベツを早めにまいたら、春にとう立ちしました。
早すぎたのが原因です。大きく育った株が冬の寒さに当たると、花芽ができます。本葉 10 枚前後で冬を越すくらいの大きさに収まるよう、まく時期を逆算してください。遅らせるほうが安全です。
肥料をやれば戻りますか?
戻りません。一度できた花芽は消えません。肥料でも水でも止められないので、まく時期と品種を変えるしか手がありません。出てしまった株は、菜花として食べてしまうのがいちばんです。