化学肥料も農薬も使わずに畑を回しているのは、特別な資材でも高価な堆肥でもなく、畑で出る雑草や残渣 + 微生物資材 + 米ぬか という、ごく身近な組み合わせです(Sofarm の歩みは → Sofarm について)。
鶏糞や有機石灰は使いますが、あくまでサポート役。土づくりの主役は「畑の中で生まれたものを、畑に戻す」という発想で、ここ数年は 菌ちゃん畝も 2 畝で試験中。微生物の働きを意識しながら、無理なく続けられる手順に落とし込んでいます。
この記事では、うちで固まってきた 量・タイミング・順番 を、季節別 TODO 付きで具体的にまとめました。
土づくりの軸は?
うちの畑では、土づくりを 3 つの素材で組み立てています。
| 役割 | 素材 | 立ち位置 |
|---|---|---|
| エサ(炭素源・有機物) | 雑草、収穫後の残渣 | 軸(畑から循環) |
| 菌(微生物) | 微生物資材 | 軸(菌の住処を増やす) |
| 発酵スターター(窒素・糖) | 米ぬか | 軸(菌の活動を加速) |
| 補助:カルシウム・pH 調整 | 有機石灰 | サポート |
| 補助:速効性の窒素 | 鶏糞堆肥 | サポート |
ポイントは「軸の 3 点セットでまず回す」こと。鶏糞や有機石灰を入れるのは、生育の様子を見て「足りない」と感じたときだけです。
この順番を守るだけで、化学肥料を入れなくても葉色が濃く、収穫期も安定してきます(Sofarm 2024 年実績:トマト・ナス・キュウリの主要 16 品目で、欠株なく収穫期完走)。
残渣はそのまま使える?
結論から言うと、「ほぼそのまま」使えます。収穫後の株や葉、雑草を畑の外に持ち出さず、畝の上で乾かしてから漉き込みます。
残渣処理の基本ステップ
- 収穫が終わった株や、伸びすぎた雑草を 根元から刈り取る
- 畝の上に 2〜3 日寝かせて天日で乾かす(青いまま埋めると窒素飢餓の原因に)
- 30〜40cm 程度に粗く切って、畝に薄く広げる
- その上に米ぬか・微生物資材を撒いてから、土と軽く混ぜる
注意したい残渣
- 病気が出た株(萎凋病・モザイク病など)→ 畑に戻さず処分
- トウが立った株でタネが熟しているもの → こぼれ種で雑草化するので処分
- トマト・ナス・ピーマンなどナス科の根 → 連作障害のリスクを下げるため、できれば堆肥化してから戻す
うちでは 畝あたり 5〜10kg 程度の残渣(バケツ 1 杯弱)を目安にしています。入れすぎると分解中に畝が沈むので、欲張らず、足りなければ次の作付け前にもう一度足します。
米ぬかはどれくらい入れる?
家庭菜園でいちばん質問が多いのが、米ぬかの量とタイミング。うちの 目安 はシンプルです。
量の目安(体感ベース)
| シーン | 米ぬかの量(目安) |
|---|---|
| 畝立て直後(残渣を漉き込むとき) | 1m² あたり ひとつかみ(約 100〜150g) |
| 追加で発酵を促したいとき | 1m² あたり ひとつかみの半分 |
| マルチの内側に追加投入 | 株元に小さじ 1〜2 杯 |
「入れすぎない」ほうがうまくいきます。米ぬかは発酵スターターであって肥料ではないので、撒きすぎると分解時に土が熱を持ち、根を傷める原因になります。
タイミングの目安
- 定植の 2〜3 週間前 に畝に投入し、微生物資材と一緒に軽く混ぜる
- 真夏に追肥的に入れたいときは 株元から 10cm 離して 薄く撒く
- 冬越し前の畝の手入れでは、12〜1 月 にやや多めに入れて春までゆっくり発酵させる
うちでは精米所から定期的に米ぬかを譲り受けています。家庭菜園では、近所のコイン精米所で無料でもらえることが多いので、まず試してみる価値があります。
鶏糞は使う? 米ぬかと、どっちが先?
鶏糞堆肥は使います。ただし 主役ではなく、サポート役 の立ち位置です。
鶏糞の使い方
- 完熟タイプの発酵鶏糞 を選ぶ(生鶏糞は臭い・ガス害のリスクがある)
- 量は 1m² あたり 300〜500g 程度 が目安(市販袋の説明より控えめ)
- 入れるのは米ぬか・微生物資材の後。順番は次のとおり
順番(標準フロー)
- 残渣・雑草を刈り、2〜3 日乾かす
- 微生物資材 を畝に散布
- 米ぬか を 1m² あたりひとつかみ
- 軽く土と混ぜる(深さ 10〜15cm)
- 2 週間置く(菌が動き始める期間)
- 必要なら 鶏糞堆肥 と 有機石灰 を追加して、もう一度軽く混ぜる
- さらに 1 週間置いてから定植
「鶏糞を先に入れたほうがよく育つのでは?」と聞かれることがありますが、順番を逆にすると窒素過多で葉ばかり茂る ことが多く、結局この順番に落ち着きました。
微生物資材って必要?
「畑の土には元々菌がいるから、わざわざ資材を入れなくていいのでは?」という意見もあります。うちの立場は 「あった方が早い」 です。
使う微生物資材
- 市販の発酵促進剤(複数菌をブレンドしたもの)
- 自家製の 米ぬかボカシ(米ぬか + 油かす + 微生物資材を発酵させたもの)
- 菌ちゃん畝 で増やした菌が住む土を、新しい畝に少量混ぜる
なぜ「軸」に置いているか
- 残渣の分解が早まる(2〜3 ヶ月かかる分解が、1 ヶ月台に短縮されることが多い)
- 土の団粒構造が育ちやすい(指で潰すとほろっと崩れる土になる)
- 根張りがよくなる(Sofarm 2024 年のナス比較:微生物資材ありの畝で根量が体感 1.5 倍)
数値は単独観察ベースなので、「絶対こうなる」とは言い切れません。それでも続けてみて、「使わないより明らかに楽」 という結論です。
菌ちゃん畝は? うちでもやってる?
結論から言うと、うちでは 2 畝のみ試験中 です(Sofarm のスタンス)。
菌ちゃん畝とは
菌ちゃん畝(菌ちゃん農法とも呼ばれる)は、木材チップや竹、もみ殻などを畝の中に埋め、糸状菌(しじょうきん)の働きで土を豊かにする手法です。
スタンス
- メイン農法ではありません。畑全体(200 坪の大部分)は、雑草・残渣 + 微生物資材 + 米ぬかの軸で回しています
- 試験中の 2 畝 で、ナス・トマトを栽培し、隣の通常畝と比較観察中
- 「菌の働きを意識する」という考え方は 微生物資材の使い方にも活きている
「菌ちゃん畝でなければダメ」というスタンスではなく、手元にある素材で、無理なく続けられる土づくり が基本姿勢です。家庭菜園では、まず軸の 3 点セットから始めてみることをおすすめします。
季節別 TODO | 1 年を通した土づくりカレンダー
関東でやっている、季節ごとの土づくり作業をまとめました(Sofarm の運用)。
| 季節 | 月 | 主な土づくり作業 |
|---|---|---|
| 春 | 3〜4 月 | 越冬畝の状態確認 / 残渣の最終分解確認 / 春夏野菜の畝立て準備 / 微生物資材 + 米ぬかを投入 |
| 春〜初夏 | 5 月 | 定植前 2〜3 週間に畝完成 / 必要なら鶏糞・有機石灰を補助投入 / マルチ張り |
| 夏 | 6〜8 月 | 株元への米ぬか少量追肥(株元から 10cm 離す)/ 雑草は抜かずに 刈って畝に戻す |
| 秋 | 9〜10 月 | 夏野菜の残渣を畝に積み始める / 秋冬野菜の畝立て / 緑肥(マメ科)の検討 |
| 晩秋〜冬 | 11〜1 月 | 冬の土づくりが本番。残渣・米ぬか・微生物資材を多めに投入し、春までゆっくり発酵 |
| 冬 | 2 月 | 寒起こし(畝を粗く起こして寒気にさらす)/ 次作の計画 |
体感としては「冬の仕込みが翌年の収穫を 7 割決める」 という感覚です。夏に頑張るより、冬に丁寧にやるほうが、翌年が楽になります。
よくある失敗パターンは?
家庭菜園で土づくりにつまずく方を見てきて、よく相談を受けるのは次の 4 パターンです。
失敗 1 | 残渣を青いまま埋める
- 症状: 定植後、葉色が黄色く窒素飢餓
- 原因: 分解中の微生物が土の窒素を奪う
- 対策: 残渣は 必ず 2〜3 日乾かしてから 漉き込む
失敗 2 | 米ぬかを撒きすぎる
- 症状: 土が熱を持ち、根が傷む / 虫やカビが大量発生
- 原因: 発酵スターターを「肥料」と勘違いして大量投入
- 対策: 1m² あたりひとつかみまで。多くて 150g
失敗 3 | 定植までの待ち時間が短すぎる
- 症状: 苗を植えた直後に萎れる / 葉が縮れる
- 原因: 米ぬか・鶏糞の発酵熱とガスが残ったまま定植
- 対策: 投入から 最低 2 週間、できれば 3 週間置いてから定植
失敗 4 | 鶏糞だけに頼る
- 症状: 葉ばかり茂って実がつかない / 病害虫が増える
- 原因: 窒素過多で植物が「軟弱」になる
- 対策: 軸は雑草・残渣 + 微生物資材 + 米ぬか。鶏糞はあくまでサポート
まとめ | まず軸の 3 点セットから
- 土づくりの軸は 雑草・残渣 + 微生物資材 + 米ぬか
- 鶏糞・有機石灰は サポート役。先に入れず、必要なら後から
- 米ぬかは 1m² あたりひとつかみ までが目安
- 残渣は 2〜3 日乾かしてから 漉き込む
- 投入から 2〜3 週間置いてから定植
- 菌ちゃん畝は 2 畝で試験中。メイン農法ではない
- 冬の仕込みが翌年の 7 割を決める
化学肥料・農薬を使わずにここまで回せたのは、特別な技ではなく、この順番を毎年繰り返してきた から。家庭菜園でも、同じ素材・同じ順番で再現できます。
FAQ
Q. 米ぬかが手に入らない場合は?
A. ぬか床用の米ぬか(スーパーで小袋販売)でも代用可能ですが、量が必要なので 近所のコイン精米所 が現実的です。無料配布されていることが多く、うちも始めた頃はそうしていました。
Q. 微生物資材は具体的に何を使っていますか?
A. 市販品とボカシの併用です。家庭菜園であれば、まずは 市販の発酵促進剤(複数菌をブレンドしたもの)から試すのがおすすめ。慣れてきたら米ぬかボカシを自作する流れが、初心者向けの提案です。
Q. 残渣をそのまま土に埋めるのは、衛生的に大丈夫?
A. 乾燥 と 微生物資材の併用 で、ほぼ問題ありません。病気が出た株だけ別管理し、健康な残渣は畑に戻しています。臭いも、米ぬかを併用するとほとんど気になりません。
Q. プランターでも同じやり方でできますか?
A. プランター用に やや量を控えめ にすればできます。米ぬかは大さじ 1〜2 杯、残渣は細かく刻んで少量、微生物資材も規定量の半分程度から。詳しくは別記事「プランター土づくり」で扱う予定です。
Q. 鶏糞の代わりに牛糞・馬糞は使える?
A. 使えますが、入手のしやすさからうちは鶏糞堆肥を使っています。牛糞・馬糞は 完熟品 を選び、量は鶏糞より多め(1.5〜2 倍)が目安です。
